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想いを重ねる夜5

Auteur: 相沢蒼依
last update Date de publication: 2026-01-17 23:29:19

「千秋の姿を見て、どう思いますか?」

 一瞬の間をおいてから告げられた台詞に、ぽかんとしたのは俺だけじゃなく、お父さんも何を言ってるんだという表情を浮かべた。

「学生時代には見られなかったスーツ姿を見て、何か感想はあるかなぁと個人的に思っただけなんですが――」

 言われてみたら確かにそうなんだけど、実家にふたりで挨拶に行ったときにスーツ姿を見せていることを、穂高さんは忘れちゃったのかな。

(いろんな思いが交差する様子を、お父さんの隣にいる船長さんは固唾を飲んで見守っているし、自分からはどうしても声をかけられない……)

 穂高さんの質問に困ったんだろう。手にした缶ビールをまたしても飲むお父さんを見ているうちに、心配になってしまった。あまりお酒に強くないのに、煽るように飲んで大丈夫なんだろうか。

「特に何の感想もない。そんなことは、わざわざ訊ねるべきものじゃないだろう」

 そういう当たり障りのない返事をするだろうなと俺としては予想できたのに、なぜか穂高さんは顔を強張らせて、驚きの表情をありありと浮かべた。

 というか穂高さんが驚いたことに、逆にビックリするしかない。思わず、まじまじと横顔
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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   ―純血の絆―③ヴァンパイアとしての愛し方2

    「君の血が欲しくて来たんじゃない。吸血衝動のつらさを知っているから、少しでも楽になればと思ってね」 まったく触れていないというのに、俺の目を惹きつけずにはいられない穂高さんの姿を見ただけで、下半身のカタチが変わってしまったということが、ものすごく恥ずかしい。 彼はひとえに俺を想って、遠い場所からこうして、わざわざ来てくれたというのに――。 それを知られないようにすべく、両腕で布団を引っ張った。妙な振動を与えないために、躰を緊張させて強張らせる。「千秋、相当つらそうだね。呼吸もかなり荒くなってる」「ええっ、えっと布団の中にずっと引きこもっていたから、酸素が足りなくなっているのかもしれないです。……多分」 首から下は完全に布団の中に入ってる。穂高さんに布団を剥ぎ取られなければ、俺が勃っていることは知られない。「ヴァンパイアの姿でいるのは、寒くないかい? 俺が布団の中に入って、抱きしめながら温めてあげよう」 布団の上から抱きしめていた俺の躰を放し、立ち上がって両目を閉じた穂高さんは、次の瞬間には人間の姿に代わっていた。「だだだ、大丈夫ですよ。しばらく布団の中に入っていたので、そこまで寒くはありません。本当に!」「俺はもともと体温の低い男だから、もしかしたら千秋の熱を奪ってしまうかもしれないね。それが分かっているから、そんなことを言って断っているんだろう?」 眉間に皺を寄せた顔を近づけて、「他にできることがあるだろうか」なんて言われたら、断ることなんてできやしない。

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   ―純血の絆―③ヴァンパイアとしての愛し方

    「うっ、穂高さんはっ……すごい、な」 満月が出る夜の前後に、吸血衝動が出やすいことが分かってから、バイトのシフトを昼間に変更したり休んだり、自分なりに工夫してやり過ごしていた。 喉の奥が干上がる何とも言えないその感じは、いく度味わってもつらいと思わされた。俺に出逢う前にこの吸血衝動を、穂高さんは必死になって抑えていたというんだから、本当に頭が下がる。 脳内に描かれる深紅の液体、煌めく赤い色の血液――それが、どんな味をしているのか。頭の中であれこれ想像するだけで涎が滴るのに、それが喉を通っても上っ面を通過するだけで、余計に干上がっていく感覚を覚える。 ぎゅっと目を閉じて、頭の上から布団をかぶって吸血衝動が治まるのを待っていたら、背中にずっしりとした重さをいきなり感じた。「千秋、随分とつらそうだね。大丈夫かい?」 それは布団の外から聞こえた、くぐもった声だった。だけど聞き覚えのあるその声を聞いた瞬間に布地を引っ張って、何とか頭だけを出した。「穂高さん、どうして……」「合鍵を使って部屋に入った。俺は昨日の夜に、吸血衝動があってね。千秋の頑張りを真似して、やり過ごしてみたんだ。だけど――」 背後から回されている穂高さんの両腕の力が、痛いくらいにきつくなる。「暗闇の中でも光り輝く赤い瞳を見ただけで、君に魅せられてしまう」 俺の姿に当てられたのか、穂高さんも髪の色が金髪になるのと同時に、両目の色が赤くなった。「駄目だよ、穂高さん。今の俺は吸血鬼なんだから」 穂高さんが欲する血を与える存在に、俺はなれないというのに。求めるように見つめられるだけで、俺自身が大きくなってしまった。

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―    荷物の行方――(竜馬目線)

    「竜馬くん、悪いんだけど受け持ちの集荷が終わったら、そのまま国道を上って、通りに面してるコンビニ3店舗の荷物の集荷、頼めないかな?」 帽子を被り直して会社を出ようとする俺の背中にかけられた声に、首を傾げながら振り返ってあげた。声の主は、電話受付のパートのおばさん。集荷を終えて会社に戻ってきたらいつも笑顔で出迎えてくれる上に、お菓子を戴いたりと結構お世話になっている人なんだ。「国道沿いのコンビニ?」 言いながらおばさんのデスクに赴くと、ここなんだけどと説明するのに地図を見せてくれる。どこだろうとしっかり確認してみたら、以前働いていたコンビニも指定されたものの中に入っていた。「竜馬、無理ならいいんだぜ。俺が行くし」 直属の上司小林さんが、気さくに声をかけてくれる。この人に面接をされてどうして大学を辞めたのかと訊ねられたとき、人間関係のいざこざがあり、疲れきって辞めたのだと説明してあった。 そういういきさつがあるので、わざわざ気を遣ってくれているんだろうな。「大丈夫ですよ。今日はいつもより集荷の数が少ないし、コンビニ3店舗回るだけなんで、あっという間でしょう」「助かるわ、ヨロシクね」 おばさんがコッソリ、俺の手に何かを握らせてくれた。薄くて細長いモノは、間違いなく板ガムだろうな。「ありがとな、いってらっしゃい竜馬」 こうして爽やかに見送られ元気に会社を出発し、受け持ちの集荷を終わらせて、国道に面したコンビニをハシゴした。一番最後の集荷は、バイトしていたコンビニだった。 スムーズに駐車場に停車して、トラックから降りる。外から店の中を覗いてみたら、見知らぬ人がレジに立っていた。「……昼間は大学があるから顔を合わせるハズがないって、頭で分かっているのにな。変に期待した俺って、やっぱりバカだ――」 逢わせる顔がないのに、逢いたいと願ってしまう。こんな事を考えるだけでも、ダメだというのに。 奥歯をぎゅっと噛みしめて被っていた帽子を目深に被り直してから、コンビ二のドアを開けた。「いらっしゃいませ!」 元気な店員の声に、しっかりと頭を下げる。「お疲れ様です。白猫運輸ですが、集荷に来ました!」 店内のお客様の邪魔にならないレジの端っこに向かい、集荷する荷物を無事に受け取った。さっきのコンビニよりも数が少ないので、そのまま両手で持ち帰れそうだ。「一

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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   それが恋だと気づくまで――④

    ***(身体が重だるぅ……) うつ伏せのまま冷たい床に横たわりながら、グッタリしていた。 行為から時間が経ってきたせいで、火照っていた身体がどんどん冷えてくる。傍に落ちていた自分のブレザーに手を伸ばして羽織りながら、目の前にいるふたりに視線を飛ばした。「んもぅ、先輩ばっかズルいですって。藤田先輩と2回も立て続けにヤるなんて」「これは、いつものお約束なんだよ。それに俺がヤってる最中、お前のを藤田が尺って気持ち良くしてもらっていただろ」「だけどイケてないんですよ。辛すぎます!」 3Pを楽しむみたいなことを言ったくせに、実際は先輩が挿入してから数分で、1年の身体を俺から引き離した。

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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   過去への灯火

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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   Final Stage 第5章:深窓の令嬢

    「そういうワケですので、暫くお休みをいただくことになります。大変、申し訳ございません。お気遣いありがとうございます」 電話の相手――船長にしっかりとお礼を告げる。『いいだ、いいだ! 普段から離れて暮らしてんだからよ。たまぁには、おとーと孝行せにゃならんって。だからっておめぇ、はっちゃきこいて頑張るんじゃねぇぞ。ぜってぇ失敗するからよ!』 ガハハという豪快な大笑いの後、勝手に電話が切られてしまった。 お蔭で暗く沈んでいた気持ちが、ちょっとだけ浮上する。明るく接してくれた船長の機転に、感謝しなければならないな。 自然と上がった口角の端をそのままにテーブルにスマホを置き、ベッドで横になっ

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